長時間職場でPCに向かい合う宿命のデスクワーカーは、どうしても肩が丸まった猫背になってしまいがちです。不格好になってしまうだけでなく、肩こりや頭 痛の要因にもなってしまうのですが、意識しても姿勢を正すのはわかっていても難しいもの。そんな「悪い姿勢」がもたらす健康への悪影響と、「良い姿勢」を 維持するメリットや、実際に座る時・眠る時などに気をつけるべきポイントをもう一度確認して理解しましょう。
「良い姿勢の利点」
「真っ直ぐ立ちなさい」と誰かに言われたり……
悪い姿勢は見た目にも良くないだけでなく、健康にもさまざまな悪影響を与えてしまいます。
座っている時、立っている時の姿勢は、全ての体の動きに伴う負荷に関係するため、「良い姿勢」を心掛けることには多くの利点がある、ということを伝える内容のムービーです。
どのような時に体に負荷がかかるのかというと、重いモノを持っている時や……
最適な姿勢をとっていない場合、体は重力に対してバランスをとるため、筋肉に必要以上の負荷がかかってしまいます。
つまり、悪い姿勢を続けていると、筋肉が凝り固まってしまったり、萎縮したりすることがあるとのこと。
その状態が続くと、筋肉が持つ負荷への対応力が損なわれてしまいます。その結果、筋肉だけでなく、関節や靱帯の消耗につながり……
ケガを負いやすくなったり、肺など臓器の機能が低下したりするそうです。
悪い姿勢だけが諸悪の根源というわけではないのですが、数多くの研究が、脊椎が左右にねじれて湾曲してしまう脊椎側彎症(せきついそくわんしょう)や、頭痛の90%を占めるという緊張性頭痛、背中の痛みなどと悪い姿勢との関連を指摘しているとのこと。
さらに姿勢は感情の起伏や、痛みの感じやすさにまで影響するといわれています。
そのため、良い姿勢を心掛けるメリットはさまざまあるのですが、良い姿勢を維持するのが難しい世の中になりつつあります。
PCやスマートフォンなどの普及につれて、人々の姿勢が悪くなっていることを示す研究も発表されているからです。
それでは、「良い姿勢」とは一体何を指すのでしょうか。人間の背骨は、前から見て33個の骨が一直線になっている必要があります。
横から見ると、首・肩・腰の部分でS字にカーブしているのが正常な状態。
生後12カ月~18カ月ごろに、筋肉の発達に伴ってS字に変化していきます。
背骨がS字の構造になることで、直立している時・歩いている時・ジャンプする時などの負荷を吸収できるようになるとのこと。
背骨が正しく並んでいれば、直立時に「肩・お尻・膝・くるぶし」にかけてまっすぐな直線になるそうです。
これにより、体を支える基礎となる支持基底面の真上に重心が保たれるようになり、筋肉の負荷による疲労を最小限に抑えることができるとのこと。
具体的には座っている時は前屈みにならないように注意し、肩をリラックスさせた状態で脇を締め、膝は直角に曲げて足を床につけるのが正しい姿勢になります。
どうしても正しい姿勢が維持できない場合は、周囲の環境を調整する必要があります。例えばPCに向かう場合は、目線と同じか少し下になるようにディスプレイを高くして……
肘や手首が負荷を与えずに支えられるようなイス・机・机のパーツに変更すればOK。スタンディングデスクやディスプレイアームは、正しい姿勢を心掛ける上で重宝するかもしれません。
眠る時は横向きで枕を使い、脚の間にも枕を挟むと良いとのこと。
男女問わずヒールが高い靴は不自然な負荷がかかってしまうため、土踏まずにフィットした靴を履くのがベター。
電話する時はマイク付きのヘッドセットを使うと、良い姿勢を維持しやすくなります。
ただし、良い姿勢を維持すれば立ち続けたり、座り続けたりしていいわけではありません。長時間良い姿勢で動かないことは、悪い姿勢で動いているよりも体に悪いとのこと。
バックパックを背負う時は、左右対称になるようにストラップや荷物を調整する必要があります。
デスクワーカーなどで長時間座る必要がある場合は、時々立ち上がったり、動き回ったり……
ストレッチなどをして筋肉や関節を動かすことで、体を効率的に支える強さを維持できるようになるそうです。
それでも悪い姿勢が直らなかったり、悪い姿勢から来る症状に悩まされたりする場合は、理学療法士に相談するのも1つの手。それほど「良い姿勢を保つ」ということは人体にとって大事であるとのことです。
なお、このTEDムービーを作成したMurat Dalkılınç博士は、姿勢による慢性的な痛みなどを研究している人物です。
わかっていてできていない事は、わかっていない事と同じです。
カラダに姿勢の悪さからくる障害がでてからでは遅いという事を、今一度自覚してみてはいかがでしょうか?