たまには少し視点を変え、いまフィットネス業界全体を揺るがしている「経済的な構造問題」について深く切り込んでみたいと思います。
近年、街を歩けば24時間営業のコンビニジムや、マンションの一室を使ったパーソナルジムをどこでも見かけるようになりました。 私が豊洲ららぽーと、登戸で当ジムのようなマイクロジム(小規模専門ジム)を立ち上げた2013年当時、日本にはこうした形態はほとんど存在せず、総合フィットネスクラブがとにかく元気な全盛の時代でした。
世間は空前の「健康ブーム」であり、市場規模も拡大を続けているはずです。しかし今、フィットネスクラブの倒産が過去最多ペースで急増しているという事実。
先日、会員様からも下記「ネットニュースでこの記事を見かけたんですが、実際のところどうなんですか?」と質問をいただきました。指導歴33年、酸いも甘いも噛み分けてきた現場のプロの視点から、この異常事態の裏側を少し考えてみました。
フィットネス倒産が最多ペース — 契約を急がせるセールストークには要注意
神戸国際大学経済学部教授
8/18(火) 8:31
健康志向の高まりを背景にフィットネス市場が拡大する一方、事業者の倒産が過去最多ペースで増えている。帝国データバンクによると、倒産したフィットネスクラブ事業者のうち、設立10年未満が6割超を占め、パーソナルジムも6件あった。一方、矢野経済研究所によれば、2025年8月時点の全国フィットネス施設は1万3876施設で、直前1年間だけで1266施設が新たに開業した。市場が成長するなか、供給が急速に増えている。問題は、倒産の影響が経営者や従業員、取引先だけでなく、料金を前払いした会員にも及ぶことだ。
ココがポイント
健康ブームでも「フィットネス」苦境 倒産は過去最多ペース、供給増で競争激化
出典:帝国データバンク 2026/8/13(木)大手が安価なトレーニングジムの展開を加速するなど競争が激化
出典:東京商工リサーチ 2026/7/1(水)会員の獲得競争の激化にともなって「入会金無料」や「特別割引」などのキャンペーンを行うことで売り上げの確保が困難に
出典:テレビ朝日系(ANN) 2026/8/16(日)スポーツジムやフィットネスクラブ、ヨガ教室の契約を店舗内で交わした場合、原則、クーリング・オフ制度の適用がありません。
出典:宝塚市役所産業文化部消費生活センター 2023/7/26(水)
コロナ禍の事業再構築補助金が導入された背景に、異業種からの参入(ピラティス、インドアゴルフ、無人ジム等)が爆発的に増えました。
つまり、「人々の健康需要が減った」のではなく、「需要の伸びを遥かに超えるペースで粗製乱造され、従来のビジネスモデルが完全に限界を迎えた(オーバーストア)」というのが現場の実態です。
1. 2026年、数字で見るフィットネス業界のリアル(データで見る現実)
帝国データバンクや東京商工リサーチ等の最新データを見ると、背筋が凍るようなスピードで淘汰が進んでいることが分かります。
- 2026年1〜7月の倒産件数:23件(前年同期19件からさらに増加)
- 年間予測:40件ペース(過去最多を大幅に更新する見込み)
- 倒産事業者の特徴:約6割超が「設立10年未満」の新興ジム
- パーソナルジムの倒産:6件(全体の約26%を占める)個人ジムは入っていない様です
全国の施設数は現在1万3,876施設に達し、なんと直近の1年間だけで1,266施設が新設されています(矢野経済研究所調べ)。
2022年あたりから倒産件数は高止まりしていたのですが、2026年に入って一気に淘汰のスピードが上がっています。
特に目立つのが、ブームに乗ってここ数年で一気に立ち上がった新興ジムの脱落です。
2. なぜ健康ブームなのに倒産するのか?3つの構造欠陥

① 値引きキャンペーンの常態化と「定着率の低さ」
ライバルが多すぎるため、「入会金無料」や「初月0円」といった割引を打たないと人が来ません。しかし、割引目当ての会員は正規料金に戻った瞬間に辞めてしまうため、獲得コストばかりが膨らんで利益が残りません。
ライバルが乱立した結果、「入会金0円」「初月無料」といった安売り合戦に頼らざるを得なくなります。しかし、「安さ」だけを目当てに集まった顧客は、正規料金に戻った瞬間に退会します。広告費ばかりが嵩み、利益が一切手元に残らない泥沼です。
② 短期集中型モデルが抱える「自己矛盾」
世のパーソナルジムに多い「2〜3ヶ月でマイナス10kg!」といった短期集中ダイエットモデル。これはビジネス構造として致命的な欠陥を抱えています。
なぜなら、「結果が出たら顧客が卒業(解約)してしまう」からです。
常に高額なネット広告費を垂れ流して新規客を捕まえ続けなければならず、集客が1ヶ月でも滞れば即座にショートする「自転車操業」に陥ります。
③ 固定費(電気代・人件費・家賃)の高騰
24時間営業のマシンジムなら電気代の高騰が直撃しますし、パーソナルジムなら腕の良いトレーナーの引き抜きや人手不足で人件費が高騰しています。売上単価は下がっているのに、毎月の固定費だけが重くなっているのが現場の実態です。
3. 【利用者の自衛策】契約を急がせるセールストークには気をつけて
最後に、ジムに通う利用者側の視点としても注意したいポイントがあります。この倒産劇で最も被害を受けるのは、熱心に通っていた会員の皆様です。
消費生活センターへの相談でも多発していますが、「数十回分のチケットを一括前払いした直後にジムが破産し、返金もされず連絡も取れなくなった」というトラブルが後を絶ちません。法人が破産手続きに入った場合、未消化分の前受金が戻ってくる可能性は限りなくゼロに近いです。
さらに注意すべきは、「店舗内で対面契約したジムの会費は、原則としてクーリング・オフが適用されない」という法的な落とし穴です(宝塚市消費生活センター等)。
身を守るために、以下の視点を必ず持ってください。
- 「今日契約すれば半額」といった即決を迫るセールストークには乗らない
- リスクの高い「数十万円の長期一括前払い」は避け、月額制(マンスリー)を選ぶ
- 過剰な大幅値引きやキャンペーンを年中乱発しているジムは警戒する
といった自衛の意識も大切だと思います。
また別の問題になりますが、トレーナーが急激に増加しましたの一括りにすると、実力の差がありすぎる事態もあり、経験不足知識不足ででお客様に怪我をさせる事故も起きている様です。
結論|「安易な利便性」が淘汰され、「本物の知性」だけが残る
フィットネス市場の倒産劇は、ブームの終わりではなく「中途半端なジムが淘汰され、本当に価値のあるジムだけが残るフェーズ」に入った合図だと思いたいです。
またパーソナルジムやフィットネスクラブなどを探している方は、派手な広告や目先の安さに惑わされず、ご自身の身体を預けるにふさわしい「本物の環境」を選び取ってください。
